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神戸市の取り組みから、"神戸らしさを守り、創る"プロジェクトなどを紹介いたします。

DXで進化し続けるまち、神戸へ。データの可視化で仕事を進める。

職員一人ひとりが自らデータを分析し、 市民サービスの向上、業務効率化を実現。

各自治体でDX化、データの利活用が推進されていますが、神戸市はそのなかでもトップクラスの取り組みを進めています。職員自らがデータを可視化・分析し、事業計画に反映する。このサイクルを繰り返すことで、市民サービスの向上や業務効率化へとつなげています。 神戸市のデータ利活用の特長や事例について、データ活用を推進する政策課と、実際に成果を生み出した国保年金医療課の職員に話を聞きました。

N.M.

企画調整局政策課 係長 平成24年度入庁 [大学卒経験者 総合事務]

N.M. さん

民間IT企業で6年間務め、入庁後は広報での市ホームページ運用や、中央図書館総務課での新館整備等に従事。昨年より現職に。全庁のデータ利活用を推進すべく、サポートや人材育成を行う。 趣味は読書。

A.M.

福祉局国保年金医療課 係長 平成27年度入庁 [大学院卒 総合事務]

A.M. さん

入庁後、建設局の経理担当を3年間、政策調査を3年間、都市政策研究を2年間経験し、現職に。3年目となる現在は、神戸市国保特定健診の実施、その後の保健指導といった保健事業を担当している。 趣味は観劇。

S.C.

福祉局国保年金医療課 平成30年度入庁 [大学卒 保健師]

S.C. さん

医療機関で看護師として8年間勤め、入庁後は保健師として、育休を挟みながら、灘区役所にて母子保健、成老人保健、感染症などを5年間担当。初の異動で、現職に。神戸市国保特定健診と、その結果にともなう特定保健指導や生活習慣病の重症化予防を行なっている。 趣味はバレーボール観戦。

Qデータの利活用、神戸市はどう取り組んでいる?#1

自治体も含め、さまざまな組織でDX化が進められていますが、なかでも神戸市はかなり積極的にデータの利活用を推進している印象があります。

N.M. さん

そうですね。神戸市は「神戸スマートシティ」というビジョンのもと、市民サービスをよりよくするために、デジタル技術の活用を積極的に進めています。 そのなかのひとつが、庁内業務におけるデータの利活用です。経験や直感ではなく、データや合理的根拠にもとづいて政策を立案、実行し、それを評価するという考え方「EBPM(Evidence-Based Policy Making)」を重視しています。より効果的な政策立案や改善ができれば、よりよい市民サービスの実現につながりますからね。 行政は縦割りだというイメージを持たれがちですが、私が所属する企画調整局政策課が、全庁を横断するかたちでデータ利活用のための環境整備や研修の実施などのサポートを行っています。

具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

データ利活用のための環境整備

神戸市に限らず、自治体はさまざまなデータを持っています。「住民基本台帳」をはじめとする住民データや、人口、交通、行政財産などに関するデータ、「国勢調査」や「経済センサス」といった統計情報、各種手続きから得た情報などを蓄積しています。 これらを複合的に活用するためには、まずはそのデータの内容がひと目で読み取れるように可視化する必要があります。神戸市では、それまでは各部署のシステムごとに管理されていたこれらの情報を集約し、「可視化ツール」によってグラフやマップなどで分かりやすく表示するようにしました。そしてそれを、どの部署からも横断的に見られるようにしているんです。 さらに、より高度な分析やデータの加工が必要な場合には、「R」という専門のプログラミング言語を使える環境も整えています。

DX人材の育成

「可視化ツール」でデータをグラフ・マップ化。「プログラミング言語」を使って分析。これらをするのは、私たち政策課ではなく一人ひとりの職員です。政策課では、庁内全体にデータを活用するための研修を行い、分析ができる人材を育てています。希望者は初級コース・中級コース・上級コースと段階的に学べるようにし、新規採用の職員に対しても初期研修を実施。希望者が集まって学習や作業を進め、不明点があれば質問ができる場も定期的に設けています また、学習や業務を進めていくなかで分らないことがあれば、気軽に相談していただける窓口をつくり、個別でも随時サポートをしています。 今では多くの職員が、自由にデータを可視化、分析し、業務に活かせるようになってきています。

具体的な事例の収集とシェア

データの可視化や分析によって実際に効果が上がった事業、効率化できた事業があれば、「事例共有会」で全庁的にシェアするようにしています。ただ「素晴らしい」で終わるのではなく、その事例がまた別の部署、別の職員にとってのヒントとなり、新たな好事例を生み出すことにつながってほしいと考えているからです。これもまた、データの利活用ですね。今後も、どんどん好事例が増えていくことを期待しています。

Q 国保年金医療課では、どのようにデータの利活用をしている?#2

福祉局国保年金医療課に所属しているA.M.さんとS.C.さんも、データの利活用をされていると聞きました。実際にはどのような業務に役立てているのでしょうか。

A.M. さん

私たちの課では、40歳から74歳の国民健康保険加入者を対象に、生活習慣病の早期発見や重症化予防を目的とした特定健診を実施しています。 その受診率を上げるため、これまでも受診できる日数を増やしたり、場所を増やしたりと試行錯誤してきました。もちろんデータも参考にしていたんです。たとえば6年に一度作成する「データヘルス計画」では、特定健診を受けた人のデータや医療機関を受診した人の診療データから、性別・年代ごとや区ごとのレベルで受診率などをまとめているので、現状がどうなっているかまでは分かっていました。その膨大な数字を行ったり来たりしながら、ああでもない、こうでもないと迷いながら対策を繰り返していたんですよね。

S.C. さん

でも受診率が思うように伸びず、行き詰まっていたような状態でしたね。

A.M. さん

そうなんですよね。それで「もっとデータを深掘りして、改善策を探りたい」と考え、分析したい内容をまとめて政策課に相談してみることにしました。 するとまず、政策課が氏名などの個人の情報を削除した「住民基本台帳データ」や「地域のマップデータ」を提供してくれました。そして、それらのデータと当課で保有している複数のデータを組み合わせて、プログラミング言語で加工・分析できるように教えてくれたんです。さらにその結果を、可視化ツールで分かりやすく表示できるようにもなりました。

S.C. さん

劇的な変化でしたよね。これによって、それまでは区ごとの受診率の違いまでしか分かっていなかったのが、さらに細かい学区ごとのデータとしてひと目で確認できるようになりました。 受診率が低い学区があれば、そこに受診会場があるのか、開催日数が足りているのかなどを見ていきます。すると、受診対象者が多いのに開催日数が少ない学区や、逆に受診会場が集中している学区も発見できたのです。 それが分かったのが昨年度だったので、今年度は必要な学区には開催日数を増やし、会場が集中している場合には一部統合する形で適正化しています。まだ1年経っていませんが、速報値として結果を分析、可視化して、その都度改善策を検討しています。

A.M.さん

このサイクルを繰り返すことが大切だと思っていて、すでに手ごたえも感じています。1年間のデータが溜まったら、集団健診の運用条件を変えることで、どの程度受診率が変化したのかなどを細かく検証する予定です。 それと並行していま、もう一歩深掘りして、どのような属性の方が受診にいたっているのかの分析も進めています。「住民基本台帳」に加え、対象者の「健診結果データ」、医療機関での受診歴などが分かる「医療レセプトデータ」などもプログラミングで加工し、統計的に分析。医療機関や健診会場が十分にある学区だから受診率が高いのか、既往歴がある方の健診受診率が高いのか……さまざまな方向から関連を探っているところです。

市民のためのさまざまな事業があるなかで、数値化しにくいものもあるのでは?

S.C. さん

私は保健師として、特定健診の結果から生活習慣病の重症化を防ぐための保健指導事業も担当しているのですが、対象者がどれくらい健康になったかというのはなかなか数値化しにくい部分ではあります。 ただ、数値化しにくい事業でも、事業展開をするときに評価指標を定めておくなど、データ活用を前提とした事業設計をしておくことで数値化することができ、データの利活用で改善することができると思っています。私が今挑戦したいと考えているのは、まさにこの部分なんです。

Qデータ利活用による、思わぬメリットは?#3

受診率向上のためにデータの利活用を進められていますが、想像していなかったメリットなどはありましたか?

S.C. さん

ありましたね。特定健診や保健指導は委託で実施していて、定期的に打ち合わせをしているのですが、これまでは「こうすれば受診率が上がるかも」といった提案をしても、感覚的な提案であるがゆえになかなか改善につながりにくく、会議で、毎回同じような議題を挙げることになり、議論が停滞していました。 でもデータにもとづいて提案できるようになってからは、実施機関の納得感も高まり、提案から実現までがとてもスムーズになりました。

A.M. さん

かなりスピーディーかつ楽になりましたよね。それに、プログラミング言語を使ってデータの加工ができるようになったことで、分析以外に普段の業務も楽になっています。政策課から、ほかにもいろいろなツールを紹介してもらったので、どんどん活用して業務改善につなげていきたいと思っています。

S.C. さん

分析をしようと思うと、結構まとまった時間が必要なんですよね。その時間を捻出するために、どうしたら普段の業務を効率化できるか……プログラミング言語の活用によりルーティーン業務が効率化されていったことで、分析に時間を割けるようになり、事業について深く考える時間が持てるようになったこともメリットですね。

Qあなたが考える神戸らしさとは?#4

今回のプロジェクトを通して感じた“神戸らしさ”とは、どんなところでしょうか。

N.M. さん

まずひとつが、「DIY(Do It Yourself)の精神」ですね。外部事業者に委託してデータの利活用を試みることもできますが、やはり業務を理解している職員がその場で迅速に分析できることが望ましいと考えています。そのため、神戸市では土台となる環境整備から実際のデータ構築までを職員自らがやっています。そのような自治体はあまりないのではないかと思います。 しかも、職員自らがデータを分析して、実際の業務に活かしている。高いレベルでデータを使いこなしているのは、さらに珍しいことではないでしょうか。

A.M. さん

プログラミング言語を使った分析は専門的なので、正直にいうと習得するまでは結構難しかったですね。ほぼ毎週、政策課でコードの書き方や分析の手法などを一緒に見てもらって。あの細かいフォローがなければ、できなかったかもしれません……(笑)。

S.C. さん

私は実はエクセルにさえ苦手意識があったので、自分としてはかなり大きなチャレンジでした。でも使えるようになった今は、「こんなデータを可視化するとどうなるかな」といろんなことを試したり、「もしかしてこれが原因では?」とひらめいた瞬間に分析して調べたりしています。こんなに便利なものを知ってしまっては、もう元には戻れませんね(笑)。

A.M. さん

私は、上司や同僚がDX、データの利活用にとても理解があり、後押ししてくれる環境があることも神戸らしいと思いました。やっぱり分析をするにはある程度業務時間を割く必要があるのですが、そこに対しても快諾してもらえましたし、みんな興味津々で、一緒に取り組んでくれたり、研修を受けたりしてくれました。

N.M.さん

神戸市庁内では、データ分析にもとづいて事業の立案や改善をするということが当たり前になりつつあります。この神戸らしさが、さらによい「神戸らしさ」を生み出すことにつながっていくのではないでしょうか。今後もデータを最大限に活かして、つねに改善を繰り返しながら、市民のためにベストを尽くせる自治体であり続けたいと思います。

ありがとうございました!