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神戸市の取り組みから、"神戸らしさを守り、創る"プロジェクトなどを紹介いたします。

都市と里山をつなぐ街 森の未来都市 神戸

街と近接する山々は神戸の財産 人と自然が暮らす「里山」を未来につなぐ!

市街地からほど近いエリアに、六甲山をはじめ緑に覆われた山々がある神戸。ところが、森林の荒廃が課題でした。そのような中で神戸市は、里山林(さとやまりん)を再生、活用するとともに、都市部でも持続可能な緑化を進める「森の未来都市 神戸」という取組みを2025年から始めています。

K.R.

建設局森林・防災部森林課 令和2年度入庁 [大学卒 総合事務]

K.R.さん

森林施策を進めるにあたり、2024年4月に森林官というポストを新設して、外部から専門家を登用。同時に担当する職員を庁内で公募したところ、選ばれたのがK.R.さんです。それまでは区役所で働いていたので、完全に未経験の分野に飛び込むことになりました。 趣味は絵を描くこと。

Q「森の未来都市 神戸」とはどういう取組み?#1

神戸のような大都市で、森林に焦点を当てた施策を進めている自治体はかなり珍しいと思います。どのような背景があるのでしょうか。

K.R.さん

市域の約4割が森林で、その9割は「里山林(さとやまりん)」が占めています。里山林というのは、コナラやクヌギといった広葉樹やアカマツが主体で、1000年以上前から人間が手を入れて利用してきました。人々は木々を伐採して薪や炭といった燃料とし、落ち葉を集めて肥料に使ってきました。 しかし1960年代になると、里山の林が放置されはじめます。というのは、農村でもプロパンガスや石油が普及したので薪や炭を使わなくなり、化学肥料が普及すると落ち葉の利用もなくなりました。放置された広葉樹林では、育ち過ぎた大木が増えて日光が地表に届きません。その結果、新しい樹木が育たずに老木ばかりになり、下層の植物も育ちづらい環境になります。すると土砂災害や倒木など防災上の問題が生じます。特に六甲山は急斜面が多いのでことさらに注意しなければなりません。 このような広葉樹林は、昔のように適宜伐採し、人の手で管理していく必要があります。すると切り株から芽が出て次の時代の林となります。しっかり新陳代謝させていかなければならない。これが「森の未来都市 神戸」という取組みが生まれた背景です。

森林を定期的に伐採していけばいいのですか?

K.R.さん

たしかにそれができればいいのですが、木を伐採して運び出すにはコストがかかります。コストを100%税金で賄うというのは限界があります。理想をいえば、伐採して次世代の森に変わるなかで、森林の所有者にメリットをもたらすことができれば、持続性が生まれます。なので、伐採した木を木材として利用し、経済価値を与えて、収益に繋げていく必要があります。定期的に人が管理すればその可能性は高まります。なぜなら、木は大きくなってしまうと切るのも手間がかかり、運び出すのも大仕事です。伐採の仕事を発注するときも、直径が40cmを超えると1本あたりの単価(伐採)費用も高くなり、技術的にも難しいので、できる事業者も限られてしまいます。 そこで樹木があまり大きくならないうちに手を入れることができれば好循環につながると思います。

Q毎日、どのような仕事をしていますか?#2

里山林を伐採しなければならないということですが、K.R.さんは実際にどのような業務を担当されているのですか?

K.R.さん

伐採する木を決めるのに、まずは現地の状況を把握するために調査を行います。国や兵庫県が作ったGISデータ/マップからエリアごと、単に針葉樹というだけでなく、アカマツ、スギ、ヒノキのいずれなのかがある程度わかるので、それを使ってどのエリアの整備を進めていくかの目星をつけます。それをもとに私自身が上司の森林官と共に現地に行って現状を詳しく把握します。ただエリアが広範になるときは、調査会社に委託するのですが、そのときは発注業務が私の仕事になるので、仕様書をつくって業者選定や契約手続きの準備を行います。 伐採する木はさまざまです。道路沿いで育ちすぎて倒れるおそれがある危険木も対象です。一方で、放置された広葉樹林では、目標林を定め、日光を阻害している常緑樹や枯れていて成長ができない木を伐採します。現地調査を踏まえて対象エリアを確定させ、どのような方針で伐採していくのかを決めた後、樹木の伐採、必要に応じて伐採木の搬出を事業者に発注します。この辺りは2024年4月から森林の専門家である森林官が在籍しているので、アドバイスをしてもらいながら一緒に仕事を進めています。事業者に発注したあとは、きちんと仕事ができているかを監督する立場になります

お話を聞いていると大変な仕事だと感じるのですが、どのような苦労がありますか?

K.R.さん

神戸では個人が所有している「私有林」の割合が高いので、木の伐採などをするには所有者の了解をとる必要があります。私も驚いたのですが、山の所有者は本当にバラバラで、人数がかなり多いのです。 まず伐採の対象エリアが決まると、神戸市が整備している「林地台帳データ」、さらに土地の登記簿・公図・地積測量図等の情報を踏まえておよその所有者を特定します。ただこの段階では、氏名と住所しか分かりません。しかも土地の境界がどこにあるのかもあいまいなことが多いのです。そこで、地元を訪れて地域に詳しそうな人たちから話を聞いて、連絡方法を探るのです。ただ、所有者が遠方に住んでいて連絡がつかないことや、既に亡くなっていて相続人が多数に上る事例もあります。最後はお手紙を書いて郵送で送るしかありません。半年くらいかかることもあります。

Qあなたが考える神戸らしさとは?#3

K.R.さんが職員として働かれるなかで感じた、神戸市らしさとはどんなところでしょうか。

K.R.さん

今の仕事のフィールドは山林ですが、名古屋出身の私にとって神戸はおしゃれなイメージを持っていたのですが、そのとおりだと感じています。落ち着いた雰囲気がある大人の街であって、大阪や名古屋の街とは大きく違っていると感じました。 六甲山などの森林を見ていると、やはり土砂災害のリスクが高いと感じます。ただ一方では、登山や自然のなかでのアクティビティが楽しめる空間でもあり、住みやすく楽しめるエリアではないでしょうか。西区や北区の里山エリアに住んでいても、電車や車で30分ほど移動するだけで、都会に身を置くことができる。例えば、畑をしたくて郊外に住んでいたとしても、三宮など都市部は通勤圏内なので働く場所に困りません。均質ではないという意味で、変化を楽しんだり、求めたりする人にはぴったりの街ではないでしょうか。 一方で仕事では、森林の調査や伐採の仕事以外に、年間5回ほどのイベントの企画や運営をする委託業務も担当しています。また、私の所属する森林課では小学生から大学生までを対象に森林関連の事業を説明して質問を受ける「出前授業」を多数実施しており、私も何度か講師をさせていただきました。私のような若手職員にもいろんな仕事を経験させようというのが、神戸市職員の中に根付いているように感じます。